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「正解だ。やつらはあの角を使った強烈な貫通攻撃が主力だ。ただあれをかざして突撃されるだけでも、かなり手強いのだが、あのホーンビートルは更にもう一つ」
鬼腕が顎から手を離し、長い腕を伸ばして虫の──口元を指差す。
「あそこから特殊な液体を吹くのだが、それを浴びると身体が貫かれやすくなる」
……貫かれやすくなる?
「ああ。理屈は判らん。あの虫が持つ一種の呪いか、超常的特性か。そういう類のものらしいが……あれを浴びた部分が、なんというか、刺される事に対する抵抗が無くなる。液を浴びれば浴びるほどな」
つまり、その液体を浴びせてからの角による攻撃が、あの虫の主戦法だと。
「そういう事だ。浴びた後に角の一撃を受ければ、余程防御を固めていない限りはまず戦えなくなる。お前が使う原理述にもああした特定の攻撃に対する耐性を弱める技式はあるが、あの虫が使う液はそれよりも数段強力だ。とにかく、角を喰らう前にさっさと倒してしまえ。これが今回の助言だ」
どん、と背中を叩かれて、つんのめりながら階段を上がる。
客席からの歓声が高まり、そして闘技場の中央付近に移動していた虫達が一斉にエリシアの方を振り向いた。
鋭く尖る角の先端が一瞬輝く。まるで金属のような光沢。堅さも恐らくは似たようなものだろう。
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