コロセウム

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「原理述技式──つまり武術のスキル、技法を操るには、当然ながら武器が必要だ。さて、お前は何が得意だ?」  鬼腕はそう訊ねながら、壁に吊るされている武器を一つ二つと手に取り、戻していく。 「剣、槌、手甲、槍、弓。基本的な武器はこの辺りだな。それぞれの特徴についてはどうだ、知っているか」  そこで漸くこちらに視線が来る。問いに対し、エリシアが僅かに首を傾げることで答えとすると、鬼腕はふむと頷き、まず剣を手に取った。 「剣は斬る事に優れた武器だ。扱いは他の武器に比べるとそう難しくは無く、安定した威力が期待できる。一応形状によっては突くことや叩く事も可能だが、やはり主は斬撃となるか。あとは比較的小回りの効く武器という点から軽い防御にも使えるし、あとはこういうやり方で遠くの敵を叩く技もある」  刃が空気を切る身軽な音が数度。そして鬼腕は深く構えると、気合の吐息と共に腕を振る。凄まじい速度で振り抜かれた剣の切っ先からどんと腹に響く音と共に白い爆発が生まれ、一瞬を置いて対面の壁際に置かれていた鎧一式が爆散した。  からんからんと音を立てて地面に転がる鎧の残骸を唖然と見つめている間に、鬼腕は剣をさっさと片付け、次の武器を取り出してくる。 「槌は所謂打撃武器だな。叩き付け、衝撃を与える事を主とする武器だ。重量を活かして戦う分、やはり動きはどうしても鈍くなるし、攻撃の精度も低くなる。ツボにはまればでかいが、逆に大きく外す可能性もある。そんなタイプの武器だな。衝撃を逃すような形状の相手には通じづらい」  大人の背丈ほどもあろうかという巨大な鉄柄、その先端にはとげ付きの黒色の球体がどんと鎮座している。  一体重量はどれ程のものなのか想像も付かないが、鬼腕がそれを片手でぶんぶんと振り回しているところを見るに、実はあまり重くはないのだろうか、などと有り得ない想像をしてしまう。 「手甲は格闘戦の為の武器だ。自分が得意とするのもこれだな。リーチは短いが、爪や蹴り、突きと多彩な攻撃が可能で、軽量故に素早い動きが出来る。味方の攻撃に追撃を加えるのも容易だ。その分、他の武器と比べると少々威力は心許ないかもしれんが」  手数でそれを補う。  鬼腕はそういって鉄板を軽く放り投げると、それを拳による高速の連打で器用に跳ね上げ、最後に蹴りつけて吹き飛ばす。鉄板はそのまま天井近くまで吹き飛ばされ、
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