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集約の波動
闘技場の中央。
四方から鳴り響く歓声に服をなびかせながら、エリシアは両腕を組んでただ敵を待つ。
『さて、今回お前のために選んだ連試合も、この一戦で締めだ』
目を閉じたまま無言。
控えの建物から通路を渡り、闘技場へとやってくる間に鬼腕から語られた事を反芻する。
『今回の相手は、この闘技場では有名なチームだ。冒険者上がりの四人組で、今は更に上位の闘技場へと進むために戦績を稼いでいるという“設定”だったか』
闘技場を囲う観客席からの声が一段と高まった。
閉じていた目を開くと、正面。自分が通ってきたものとは別の通路から、四つの影が姿を現すのが見えた。
『構成は騎士、軽戦士、魔術師、吟遊詩人。騎士が味方を守り、後の者が攻撃する。これは二戦目の三人組の時と近いか』
何処からか聞こえてくる、対戦相手となる者達の名を順々に告げる声。それは客席からの歓声に遮られて、エリシアの耳には殆ど届かなかった。
だが、エリシアにしてみればそんな事はどうでも良かった。彼らの名前など知ったところで意味は無い。考えるべきは彼らがどう動き、そして自分が彼らをどう叩くか。エリシアは愛用の武器を手に取った。
『だが、今日の相手はもう少し複雑だ。単純な守り手と攻め手という二種の構成ではなく、防御、攻撃を務める者に、もう一つ。補助する者達がいる。彼らの技が、守るものと攻めるものの力を大きく高めるだろう。それを身体で知るのが今日の戦いの肝ではあるな』
中央に立つエリシアへと、四人がゆっくりと近づいてくる。
前に一人。その僅かに後ろ、左右に二人、そして少し離れて最奥に一人。それが彼らの陣形だった。
『助言をするなら……そうだな。あのチームには要が存在する。そいつが動く前に倒すか、無力化する事ができれば何とかなるだろう。勿論、逆に言えば』
(その要を何とかできなければ敗北する、という事か)
要。
定石ならば、最後衛に配された魔術師。だが最奥を狙うには、守り手たる騎士をどうにかする必要があるが……。
『では、行ってこい。奴等と対等に戦う事ができたなら、戦いの基本については学び終えたと言って良いだろう。健闘を祈る』
鬼腕の最後の言葉を思い返すと同時に、眼前の敵が動き出す。
***
チーム“エクリプス”が現れた!
[敵出現]
─See you Next phase─
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