古代羊の怒涛

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 通路の終わり。小さな階段の先からはきらきらと輝く陽光。  目的地である闘技場だ。  照り付ける陽光の向こうに、幾つかの影が見えた。 「古代羊。“大崩壊”以前のロシェと呼ばれる種だな。古く、そして強い羊だ」  闘技場で羊を相手にするというのも何だか稀有な経験だ。  思ったまま呟くと、鬼腕は闘技場に屯している羊と、その中に立つ一つの人影を眺めたまま、口の片端だけを器用に上げて笑う。 「つまり闘技場で戦える程の力を持つ羊ということだ。その動きの特徴の一つとして、古代羊特有の習性を利用した攻撃がある。見ろ」  羊達の中に立つ人影──フード付きの外套を羽織ったその人物は、手にした杖をちりんと鳴らし、そして何か丸いものを投げる。  すると、その何かを追いかけるようにして、のんびりと闘技場の中を歩いていた羊達が突如猛烈な勢いで突進を始めた。  無数の激突音。羊同士が凄まじい速度でぶつかり、しかし彼らはその衝撃に怯んだ様子もなく、転がる丸い物体を追いかけていく。  最初にその丸い物体に追いついた羊が、それを口にくわえて飲み込むと、その羊も、他の羊達も突然凶暴さをなくし、またのろのろとした動きに戻っていった。 「…………」  一部始終を見ていたエリシアは、そのギャップに眼を瞬かせた。  羊というよりは、まるで闘牛をみているようだった。 「羊使い、あのフードの男がああやって羊達を操って戦う。まともに戦えばあの羊達の狂気じみた突撃を正面から喰らう事になる。一発二発なら耐えられるかもしれんが、更に続けて喰らうと……さてどうなるだろうな」  鬼腕がそこで漸く振り返り、エリシアを見下ろす。 「あれが今日のお前の相手だ。羊使いが使う液体と、そして空中へ跳ね上げる攻撃。それにどう対処するかが鍵だな」  そして鬼腕はエリシアの背中に回ると、通路から闘技場へと片手で押し出した。つんのめるようにして闘技場へと姿を現したエリシアに、辺りを囲う客席から歓声があがり、そして対戦相手である羊と羊使いが、やってきたエリシアを一瞥する。 「さて、頑張れ。兎に角勝つか、最低引き分ければ良しだ」      *** 古代羊の怒涛が現れた! [敵出現] ─See you Next phase─image=337785354.jpg
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