序章~小笠峠~

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ヒルクライムでは市橋が先行。 智也が前に出ようとすると市橋が進路を塞ぎ、市橋が逃げようとすると智也がプレッシャーをかけながらついてくる。 抜くに抜けない展開が続いた。 結局、ヒルクライムでは決着は着かなかった。 残るはダウンヒル、今度は智也が先行だ。 智也はドリフトの際に何故かイン側を空けていた。 市橋は何度かカーブを曲がりながら確認する。 (行ける!!) 次のカーブで市橋は勝負に出た。 イン側に車を滑り込ませ、一気に抜こうとする。 キイィィイイィイイイイイイ…… (抜けた!!) 市橋は確信した。 タイミングにもコースにも狂いはなかった。 だが、智也の前に出ることはできなかった。 (……!?) 何か特別な事をされた訳でもなく、ましてやアクセルは緩めていない。 市橋はもう一度仕掛ける。 キイィィイイィイイイイイイ…… (……!!?) さらに2回ほど攻める。 キイィィイイィイイイイイイ…… キイィィイイィイイイイイイイイイイ……… 市橋の走りは悪くない。 だが、なぜか前に出ることができない。 (くそッ、なんでだよッ!) だんだんと心の余裕が焦りへと変わってゆく。 もちろん、これが智也の仕掛けた罠だった。
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