序章~小笠峠~

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一方の奈美は焦りに焦っていた。 始めこそまだ離されなかったが、中盤以降だんだんと離されてきた。 (そんなに実力差があるの…) 奈美の考えでは走り自体は悪くない。むしろ理想のコース取りをしている。 しかしながら、自分で何が悪いのかわかっていない。 以前にアクセルを踏み込んでいないことを指摘されたこともあったのだが、本人はもう改善したと思っているらしい。 だが、アクセルをほぼべた踏みの市橋と走るとその差は歴然だった。 コーナーに入る度に差を広げられ、追い抜くチャンスすらも作れない。 (これは実力差なの…それとも…) だんだんと悩みのスパイラルに陥っていった。 考え事を深くしていくうちに車速も遅くなっていく。 結局頂上のパーキングまで市橋のテールの光すら見えなかった。
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