序章~小笠峠~

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音の主がパーキングに入る。 赤いRX-7だが、ボンネットに緑のマークが入っている。 「お~い、ともや~ん」 市橋が手を振る。 RX-7のドライバーもそれに気づいたのかパッシングで返す。 市橋が赤いセブンのドライバーに近づき、話しかける。 「遅いぜ~。いくらなんでも遅すぎだろ~」 「スマン、配送先から帰る途中の道が混んでて遅れた。 ま、10分くらい許してや」 「たしかに、ともやんにしては珍しいからな」 ともやんこと、落合智也(オチアイ トモヤ)。 赤いRX-7が愛車だが、他にインテグラとR32も所有している。 仕事はトラックの運転手、そのため走りに来るか来ないかはいつも本人の気分次第である。 一応速いことで名は知られている。 ちなみに約束はきっちりと守り、集合時間に遅れることは(不可抗力があった場合を除き)なかった。 今回も渋滞という不可抗力なので仕方ないだろう。 「んで市橋、俺を呼んだ訳は?」 智也の問いに市橋は笑って答える。 「理由? そんなのただ走りたいからに決まってんだろ」
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