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「秀。」
「ん?」
「…ありがとう。」
「…ん?なにが?」
怪訝な顔で眉を寄せてあたしを見返す。
背伸びして、その耳元に口を寄せる。
「・・・。」
「…っ。」
耳打ちした言葉に、秀斗は一瞬固まる。
「ほら。早く帰んなきゃ。明日はお父さんとこの事務所行くんでしょ?」
「…え?あ、ちょっと…。」
先に歩き出したあたしに、追いついてきた秀斗がちょっと笑いながら言う。
「なあ、もっかい言って?」
「…やだ。」
「いいじゃん。」
「やーだ。」
「っだよ。珍しいこと言うから、どっきどきしちゃったじゃん。」
「ごめんね、普段素直じゃなくて。」
自分で言っといて恥ずかしくなって、あたしは早歩きを始める。
そこにまた追いついてきた秀斗は、あたしの肩を掴んで引き止める。
「俺も…。」
耳元でその声。
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