印籠

3/9
前へ
/223ページ
次へ
親父さんだと説得力があるのか、近所の人達の俺を見る目が和らいだ。 「香織がバイトの日は、猛志君が送ってくれるので御礼にと。」 親父さんは声に力を込めた。 「最近得体の知れない不審者が出て、娘が怯えていたものですから!」 全員左紀子を見た、噴怒の顔に変化している。 近くに立っていた人はビクッとして後退った。 ほらみろ!自分だって逃げるじゃねぇか。 怒ったり興奮状態だったり、そんな時の左紀子が、どれだけ恐ろしいか解ったか! 「私は何も悪くない。」 ヒロインぶって浮かれ上がっていたのに、自分の行動を不審者と言われた。 逆恨みの激情が目に見えそう、手まで怒りに震えている。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5035人が本棚に入れています
本棚に追加