左紀子の訪問

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繁敏の噂が大学で流れ始めた。 親父の工場が倒産したこと。 かなりの金額の借金が出来たこと。 自宅は債権者が押し寄せていて、家族全員身を隠していること。 普段は繁敏を気にかけもしないくせに、知ったかぶりして話す奴らに腹がたつ。 携帯代金なんかねえよな。 理由を打ち明けてはくれなかった。 それでも居なくなる直前に、俺の部屋に来たんだよな。 部屋に戻って頭に昇った血を鎮めるように、冷たい烏龍茶を飲む。 ピンポーン♪ 脳天気な玄関のチャイム音。 明るく騒ぐ気分じゃないんだが、一応ドアを開ける。 左紀子が立っていた。
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