やってない

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 良太は寝ぼけ眼で問い返した。  観光バスが関越道で立ち往生した理由を聞かされ、良太はそこで初めて状況を理解した。 「良さん、さっきは、うなされてましたよ」  内三が声をかけた。 「そう言や、俺は、やってないとか、妙なこと言ってたな。痴漢の濡れ衣でも着せられたのか?」  清次郎が訊いた。 「はっ?」 「痴漢の冤罪が流行ってやがるからな。あれか? 勘違い女に、体を触られたなんて難癖つけられたか? そんな悪い夢でもみたのか?」 「いやいや、きっと奥さんに問い詰められた夢でもみたんだと思いますよ」  内三が笑いながら口を挟んだ。 「いや、そうじゃなくて……」  良太は返答に窮して口ごもった。 「あっ、動いた」  警察の誘導で徐々に車が流れ始め、バスはゆっくりと動き始めた。事故の始末はまだついていないようだが、ひとまず停滞が解除され、パニックは回避されたようだ。  渋滞から解放されたことで車内の雰囲気がガラリと変わり、乗客達は再び和やかな会話を交わし始めた。 「なんだ、良ちゃん。浮気してたのか? この野郎、うまいことやりやがって。昨日のコンパニオンだな。で、どの女だ? あの、たらこ唇の女か? どうなんだ? こいつ白状しねえか! ったく。一人でいい思いしやがって。このこのーっ、女たらしめーっ」  清次郎は良太の首を絞める真似をしながら揺さぶった。
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