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「断る。」
広い我が家の門の前に立ち、我が家の旦那様が冷たく言い放つ。
腕を組み目の前に立つ人全てを見下ろす不機嫌な顔は王様みたいだ。
我が家の王様こと海斗の前に立つ人々はそれこそ我が国の偉い人達ばかりで、私は海斗の無礼な物言いに平謝りするしかない。
そんな私に、海斗がため息をついた。
「何を謝る事がある。突然やってきて突拍子もないお願いをしてるのはこいつらだろう。」
「な…それはそうだけど…でも言い方というものがあるでしょ?」
焦る私をよそに海斗は冷静そのもので、少しも視線をそらさずにお偉方を睨みつける。
「…いやいや、結城さんの言う通りだとは思うんですがね。…私どもも失礼を承知でお願いするしかないんですよ…。」
困り果てた声を出し。
お偉いさんが後ろを振り返った。
そこに停まる何十台もの黒いベンツに眩暈がする。
広い道路とはいえ、これだけ停まっていると迷惑極まりない。
すると、突然一台の車のドアが開き、運転手らしき人が後部座席のドアを開け赤い布を地面に引き出した。
黒く光った靴が布の上にそっと降り、真っ白なスーツを纏った人物が姿を現す。
その背の高さと整った顔立ち、金色に輝く髪に、思わず息を飲んでしまった。
そして低く流暢な日本語で言い放つ。
「何をモタモタしてるんだ?さっさと中に入れないか。」
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