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「おい、言葉に気をつけろ。私を誰だと思っている。」
「はっ…ワガママで自己中心的な思考しか持ち合わせていない若造だろう。」
馬鹿にしたような海斗の口調に、急に外人さんの後ろへ黒ずくめの男達が近寄って来た。
え…SPだ…。
一目でそれと分かる服装に、一歩後退する。
一触即発。
修羅場確実。
そう思い泣きそうになったその時。
「…それくらいにしませんか。」
静かな声が聞こえ、柔らかな物腰の男性が姿を現した。
「あ…」
その顔には見覚えがある。
我が国の外務大臣ではないか。
さすがの海斗も驚いたのか、少し目を丸くして口を閉じた。
「結城さん…すみません、ちょっとこちらへ。」
外務大臣が海斗と私を少し離れた場所へと誘導する。
静かに口を開いた外務大臣の顔はほとほと困り果てていた。
「外務大臣の相楽と申します。この度は突然のお願いに結城さんも驚かれた事でしょう。本当に申し訳ありません。」
海斗に名刺を渡し、相楽さんが深々と頭を下げる。
「顔を上げて下さい。あなたが悪いわけじゃない。」
「…いえ、ワガママを聞かざるをえない…私達が悪いには違いありません。」
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