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「……」
しばらく押し黙った後、斗真の口が微かに動く。
「ごめん…」
「!」
まさか本当に謝ってくれるなんて…。
少し驚いたが、胸が温かさに包まれた。
斗真の瞳が、安心したように潤んだから。
そうよ。
そうだよね。
斗真は…本当はすごく優しい子なんだ。
反抗期に気を取られてそんな大事な事を忘れていた。
反抗期だからって、斗真の良い所が失われたわけじゃない。
私は昨日言われた瞬間に叱ってやれば良かったんだ。
…謝る機会を、私が奪っていたのかもしれない。
「…斗真…。」
なんだか胸がいっぱいになり、斗真を勢いよく抱きしめた。
「わっ、ちょ…やめろよ!」
「照れなくて良いのに~!可愛い奴め!」
嫌がって暴れる斗真を更に強く抱きしめる。
斗真の肩越しに海斗と目が合うと、その瞳が優しく微笑んでくれた。
「だ~もう!離れろって!…でも俺はあの王子とかいう奴嫌いだからな!」
私を無理やりに引き剥がして斗真が叫ぶ。
昨日の事件のせいなのだろう。
「安心しろ斗真。」
ずいっと海斗が私達の間に割って入り、斗真に意地悪な笑みを向けた。
「…俺もあいつが大嫌いだ。」
その声の低さに、和やかだった室内が凍えきった。
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