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そう分かったら、もう海斗に声をかける事も出来なかった。
王子が使っていたパーティー用の広間から聞こえてくる、物を運び出す音も。
聞き慣れない外国語も。
今は何も聞きたくない。
頭に浮かぶのは王子の寂しそうな顔。
追い出すという行為は本当に正しかったのだろうか。
窓の外だけを見つめる海斗も…きっと私と同じ事を考えている。
何故かそう確信していた。
「夜の8時頃、我が国から王族専用機が来る。…それまでは私がここにいる事を許してくれ。」
7時になり、夕食の途中でリビングに現れた王子が言った。
「…大平、こいつにも何か夕食を…」
「その必要はない。お腹も空いていないんだ。」
海斗が気をきかせて言った事に首を振り、王子は少し離れた壁に背中を預ける。
「…出て行くのか?」
斗真が会話から察して私に小声で聞いた。
「…う、うん。あのね…」
私が説明しようと身を乗り出すのと同時に、寂しそうな声が呟く。
「…少しの時間…私の話しを聞いてはもらえないだろうか。…嫌なら独り言だと流してもらって構わない。」
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