王子様は王様を嫌う

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突然の事に全員が言葉を失っていると。 「…独り言なんだろう。話せば良い。」 まるで関心がないとでも言うようにナイフを動かしながら海斗が言った。 王子はふっと苦笑し、ポツリポツリと話し出す。 「…私は…私の父は本当に素晴らしい王だ。祖父の代で傾きかけた我が国をたった15年で持ち直させた。失いかけていた国民の信頼も回復し、父は【真の王】として崇拝されている。だが…」 言葉が途切れ、王子がきつく唇を噛み締めた。 「その一方で、あちこちに愛人を作り子供まで産ませ無駄な権力争いの火種をわざわざ作っていった。…そんな父への憤りを、母は全て私にぶつけるようになったんだ。…愛人の子が後継ぎになるという事態を避けるため…私に厳しい躾と行き過ぎた虐待をした。更には寝る間を惜しみ勉強をさせられた。」 虐待。 その単語に思わず手で口を押さえる。 思った事はみんな同じだったらしく、大平さんや子供達まで辛そうな顔をしていた。 「だが…そんな状況から私を救ったのは…他でもない…父だった。火種を作ったのは自分なくせに、母を叱りつけそれ以降私を公務などに連れて行ってくれるようになったんだ。」
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