王子様は王様を嫌う

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尊敬してやまない父に苦しめられた人生。 父親を恨まなければ、嫌わなければ歩いてこれなかったのかもしれない。 「…少し喋り過ぎたな…。そろそろ時間か、では、世話になった。」 わざとらしく素っ気なく言い、王子がドアに向かって歩き出した。 そしてドアノブに手をかけた瞬間。 意外な人物が口を開く。 「…別に良いじゃん、追い出さなくても。」 「え…と、斗真?」 まさか斗真が王子を庇うとは思わなかったので、全員が一斉に斗真を見た。 食べるのをやめないまま、斗真は更に続ける。 「…窮屈な毎日が嫌だったんだろ。誰かに粗を探されないようにきっちり生きる毎日が、辛かったんじゃねぇの?だから滞在先に大使館じゃなく一般家庭の家を選んだんだろ?」 「…何故…」 王子が目を丸くしている所を見ると、斗真の言った事は当たっているらしかった。 「…良いじゃん。この家が羽を休める場所になるなら。偉大過ぎる父親の姿から逃げられる場所になるなら。…SPがきっちり守ってくれるさ。今追い出すのは…あまりに残酷だ。」 そう言った斗真の瞳が切なそうに細められる。
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