6180人が本棚に入れています
本棚に追加
尊敬してやまない父に苦しめられた人生。
父親を恨まなければ、嫌わなければ歩いてこれなかったのかもしれない。
「…少し喋り過ぎたな…。そろそろ時間か、では、世話になった。」
わざとらしく素っ気なく言い、王子がドアに向かって歩き出した。
そしてドアノブに手をかけた瞬間。
意外な人物が口を開く。
「…別に良いじゃん、追い出さなくても。」
「え…と、斗真?」
まさか斗真が王子を庇うとは思わなかったので、全員が一斉に斗真を見た。
食べるのをやめないまま、斗真は更に続ける。
「…窮屈な毎日が嫌だったんだろ。誰かに粗を探されないようにきっちり生きる毎日が、辛かったんじゃねぇの?だから滞在先に大使館じゃなく一般家庭の家を選んだんだろ?」
「…何故…」
王子が目を丸くしている所を見ると、斗真の言った事は当たっているらしかった。
「…良いじゃん。この家が羽を休める場所になるなら。偉大過ぎる父親の姿から逃げられる場所になるなら。…SPがきっちり守ってくれるさ。今追い出すのは…あまりに残酷だ。」
そう言った斗真の瞳が切なそうに細められる。
最初のコメントを投稿しよう!