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「おい、何故ニンジンをよけているんだ。」
それから数日後の朝、海斗が眉間に皺をよせて食器を見下ろす。
その食器は王子のもので、その上にはキレイによけられたニンジンだけが残っていた。
「……キライだ。」
ぼそっと言う王子の声が妙に可愛いく響く。
「マジかよ…」
「斗真、好きキライは誰にでもあるだろう?」
斗真の呟きに慌てて遊真がフォローを入れたのに、可愛い末っ子の発言がそれを台無しにしてしまった。
「なんで?パパは出されたものはきちんと食べなさいっていつも言うよ!だからさとみは嫌いでも全部食べるよ!」
「う…」
さすがに小学生に注意されたのは恥ずかしかったらしく、王子が頬を染める。
「偉いぞ里海、その通りだ。」
優しい顔で里海に微笑み、海斗の視線が再び王子に向いた。
「…我が家で食事を残して良いのは、アレルギーがある食べ物が出た時と体調不良の時だけだ。この野菜も料理も、作ってくれた人がいるのだという事を考えろ。…食べなさい。」
ぴしゃっと言い放った海斗。
王子は何か反論しようとして口を動かしたが、結局渋々フォークを握る。
ニンジンを口元まで運び、目を瞑ったままそれを口に放り込んだ。
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