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「航……その日記、見たわね?」
顔面の筋肉をギチギチと強張らせながら、無理矢理な微笑を浮かべる梓。
左手で右の拳を握りしめ、ボキッベキッ、と嫌な音を鳴らしながら。
『恐怖』そのものとも呼べる存在が、航人の前に屹立していた。
まだ日記帳を持っていたところを、『恐怖』に見られた。
まだ視線を合わせてもいないのに、航人は既に冷斗三汗の思いだった。
日記の所有者は、怒りのためか今にも爆発させそうな雰囲気を醸し出しながら、双肩を上下に震わせている。
スポーツ少女らしい、短く切り揃えられたショートカットの黒い髪。
憤慨している為か、普段よりも幾分吊り上がった、勝ち気な上がり目。
程よく絞られたウエストに、小股の切れ上がったすらりと長い足。
身長は驚異の186cm、学校一背が高い女子であり、航人の幼馴染み――――
否。
この場に最も現れてはならない人物――仄雲梓だった。
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