記念日

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二人で洗い物をして、二人で テレビを見る。 ブラウン管には、野球中継が 映し出されていた。 智代 「朋也は野球が好きなんだな」 朋也 「スポーツなら大体は好きだよ」 智代 「そうか…朋也はスポーツ少年 だったんだな」 朋也 「それ以外取り柄なんてなかった からな」 智代 「………」 朋也 「今じゃ、それもしてなくて、 取り柄もないけどさ」 智代 「そんなこと言うな。取り柄が ないことなんてない。 おまえは私を幸せにできる。 それが取り柄だ。」 ふたりを隔てるものは今はもう 何もない。 体を傾けて、キスをした。 けど、すぐ胸を押され、 引き離される。 朋也 「…ん?」 智代 「ちょ、ちょっと待て…」 智代は身を引いて、そして両手で 自分の口を覆った。 また息の匂いを確かめている ようだ。 朋也 「おまえは気にしすぎだ」 智代 「デリカシーのない女は嫌なんだ。 それにおまえは…リップクリーム とか…口臭剤のたぐいを使うのを 嫌うからな…」 朋也 「俺はそのままのおまえがいい んだ。でもまぁ無理は言わないよ。」 俺はテレビを見るのに戻る。 智代 「あ、いや…」 智代が何か言いたそうに逡巡する キスを途中で止めてしまったことで、俺が 気を悪くしたと思っているようだ。 けど、自分からもう一度してくれ とも言えない。それで困っている 様子だ。 仕方がないな…こちらから きっかけを作ってやろう。
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