出張

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山崎と二言、三言話し総悟は町へと繰り出していった。勿論、見回りの為ではない。絶好の昼寝スポットに行くためだ。 「まずは、駄菓子やで菓子買って、そんでもって昼寝しに公園に行くか」 駄菓子やで適当に菓子を買い漁り、公園に向かって歩いていく。 そんな事をしようとすれば土方の雷が落ちるが今は土方はいない。好き勝手し放題ため満足し、満面の笑みを浮かべながら公園の大木に寄りかかった。 しかし、楽しいはずなのに胸にぽっかりと穴が開いているような苦しさが込み上げる。 そんな自分の気持ちを誤魔化すように、愛用のアイマスクを装着し眠りへと入っていく。 「ん‥すーすー…土方さ…ン」 総悟が眠りにつき暫らくして、寝息とともに寂しげに相手の名前を呟いた。これが総悟の本音なのだろう。 本当は土方が居なくて寂しくて寂しくて仕方がない。だが、その気持ちを認めたくなく、いつも以上に好き勝手に振る舞い己の気持ちを誤魔化しているのだ。 昼寝を始めて数時間後日も傾き始め辺りが真っ赤に染まり始めた。 「総悟…‥惰眠を貪るたァ、どうゆう了見だコラ!!」 「何でィ。別にいいだろィ。ホント頭の堅い人だ…。‥…あれ、土方さん?」 土方の声が聞こえアイマスクを外すものもそこには土方は居なかった。否、声ですら幻聴、もしくは夢だったのかもしれない。 「居るわけないの無いのにねィ…。何やってんだ俺…‥」 消えてしまいそうな声で呟くと総悟は立ち上がり、屯所へと足を向ける。 帰り道、空を見上げると昼間青かった空が太陽の加減で真っ赤に染まり心の奥底を透かして見られているような気分になり、総悟は少し切なくなった。
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