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……や、闇の中に思考を投じれば、一年の時に学校で習った事柄に想いが至るんだ。
例えば、家の住民を呼び出すためには、それと分かる合図が必要だ。ノックとか、チャイムとか、こんにちはーとか……。それがなければそこに住むものにこちらの存在が認知されないわけだし、認知していない対象に何かしらの施しが行われるはずもないだろう。
住人に出てきてもらうためには、相手にその意図がわかる方法で、それを伝えることが必要なのだ。
これは異世界の力に対しても同様で、彼の世界の力を引き出すためには、正しい合図を紡がなければならない。人々はそれを、ベルの音と来訪者の声による唱(うた)になぞらえて、総譜──スコアと呼んだ。
そのスコアを詠む者たちは『詠唱師』と呼ばれ、女性の詠唱師を『エンゼル』、男性の詠唱師を──、
『おーい。シュウ。聞いてる?』
うん? さっきから何か俺を呼ぶ声が聞こえる気がするが、この際無視するとしよう。俺は今、クレストとスコアの神秘に想いを馳せることに忙しいんだ。どこぞのせっかち女とか、どこぞの変人野郎とかの声に耳を傾ける暇なんて無い。
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