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「あんずるな、何度も説明したとおり理論上は可能だ! 実際は知らんが、だからこそ試すのさ!」
リオに代わってグランが力強く握りこぶしを突き出し、天に向かって親指を立てた。
「黙れ元凶! 俺で試すな!」
今回の騒動──と言うほどでもないが、試みの原因となったのはグランに他ならない。もちろんリオが直接的に手を下すわけだが、それを可能にしたのがこの技師である。何でも、エンゼルの声をドラゴンスコアの低音まで下げる道具を完成させたらしい。
クレストは一定以上の高音、あるいは一定以下の低音のスコアに反応するのだが、その音程を相対的に変化させることで、本来は詠めないはずのスコアを詠唱させるのがその道具なのだという。『変声機』と名づけられたそれは、今リオの左手にしっかりと握られている。手中にすっぽりと収まった黒い柄の先端には、手のひらほどのこれまた黒い円盤がくっついており、その円盤こそが変声機の本体だ。そこに声を通せば、あら不思議。エンゼルなのにドラゴンスコアが──ということが起こるらしい。
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