5人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなことを思いながら、この日の俺は、おそらく有意義な放課を過ごすべく、とある場所に向かって廊下を闊歩していた。夏の日差しが容赦なく校舎に照りつけているが、それほど汗ばむわけでもないのはいつもの事。足を止めて窓からグラウンドに視線を落とせば、部活動前の生徒たちが自主練に汗を流している。実に暑そうだ。
連中みたく一歩外に出れば、うだるようにクソ暑いことは間違いないのだが、いやはやこの施設は便利なものである。それもこれも紋章のおかげだ──といいたいところであるが、屋内が快適なのは紋章のおかげではなかったりする。窓ガラス自体に冷却効果が備わっているのだ。これは素材による効果なので紋章学は専門外。科学という分野のなせる業である。
触ってみると分かるが、この日差しにもかかわらず、ひんやりと心地いい。ほっぺたをくっつけるとなおよし。ああ、気持ちいいんだよなこれ。
ちなみにこのガラス。かなり高価なものなので、普通ならこんな風に頬ずりできる機会はあまりない。しかし、この学校の科学科なる学科ではこのガラスを作成する授業があるらしく、その成果物がこのように使用されているのだとか。科学は紋章学と相容れない部分が少しあるのだけど、こういう物を生み出してくれると言うのはありがたいことだ。
最初のコメントを投稿しよう!