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「収温ガラスに御執心か? これは感心だ。いよいよシュウも科学の魅力に目覚めたか」
窓にべったりと頬をくっつけて至福を感じているところに、声をかけられた。閉じかけていた目を開けば、そこには茶色いボサボサ頭の男が、ギラギラと差し込む日差しとは対照的な柔らかな笑顔を湛えて佇んでいた。
清潔感漂うパリッとした半袖のカッターシャツ、それが腰のベルトの中へと消え、そこからはこれまた清潔感漂う灰色のズボンがのびている。朝からずーっと身に着けていたとは思えないほどの衣服の乱れっぷりである。つまり全然乱れてない。
「……グラン」
ラグランドル・アップルゲイト──俺が最近知り合った科学科の生徒である。略してグラン。科学に対する情熱がすこぶる篤く、そこに知識、実力が伴うまさしく科学の申し子。と周りに騒ぎ立てられている男である。
「なんでここにいるんだ? 研究棟、違うだろ?」
俺はグランを訝しげに見やる。科学科に割り当てられているのは東の科学棟。ここは俺が所属する紋章科に割り当てられた西の紋章棟である。
ちなみに、研究棟は基幹棟という各学科共有の施設を囲うように三つあって、残りの南の棟は「詠唱科」と言う学科が割り当てられた詠唱棟だ。
そんなわけで、他学科の生徒が紋章棟に現れるというのは珍しい。逆もまた然り。
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