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俺の言葉によほど感動したのだろう、彼は笑顔を貼り付けたままポカンといった感じで固まっていた。その彼を通り過ぎて、俺は再び歩き出す。そろそろリオに殺気が満ち溢れそうな時間ではないか。
「……おかしい。シュウが優しいだと?」
背後で若干失礼なセリフが聞こえたのは、気にしないことにしよう。イベント会場は眼下に広がるあのクソ暑そうなグラウンド。実のところ、今回は何をやらかすつもりかは知らされていない。聞いても『ヒミツ』と言われるだけだった。
本日のグラウンド集合に至るまでの三週間。俺たち3人は基幹棟のとある一室で顔を合わせ、互いの進捗状況を報告した後、グランはひたすら科学棟の工作室に篭り続け、リオは自主連とか言って詠唱棟の詠唱室に足しげく通っていた。俺はと言うと『人一人がグラウンドから基幹棟の屋上まで跳躍できるようなクレスト』という課題に取り組んでいた。
この課題、正直言って心踊った。
クレストというものは良くも悪くも素直であり融通がきかない。だから、そこから発現させる事象に要求するものが増えれば増えるほど、その作成難易度も増加するのだ。これにはやり甲斐を感じずにはいられない。
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