プロローグ

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――死に物狂いで戦い。たどり着いた場所は安息の大地。  昔居た場所とは天と地以上の差がある。もうあの場所に戻る理由などは無いのだ。  戦い抜いて戦い抜いて、地獄に塗られた大地を駆けた。獄炎に焼かれた森を駆けた。  何百、何千、何万の軍隊を斬り伏せたとき……少年の鼓動は大地を叩く豪雨より激しく。呼吸は窮地に追い込まれた獣のように荒くなっていた。 「……ふぅッ……ふぅッ……ふぅッ…………うッ!」  少年は吐血する。まだ幼さが残る顔つきだが、頬は痩せこけ。闇に溶け込むような衣服は酷く汚れていた。  見えない追っ手を威嚇するように、森を見据える少年の瞳には…十代らしからぬ修羅の気配が見て取れる。  少年は瞼を重そうに瞬かせる。瞼を閉じては駄目だ、深く閉じた瞬間に少年の身体は飲み込まれるだろう。 ――ほら、奴等がやって来た。  水溜まりが地響きを感じとり、森の生物たちが騒ぎ立てる。 『……オォォォォッ』  逃げることは叶わない。戦いを挑んでも適わない。奴等と遭遇したが最後、生きては戻れない。  体力も精神力も限界だ。少年にはもう魔法一つ詠唱できない。そう思わせるほど少年は衰弱していた。  怪物が森から飛び出す。月の輝きは獣を照らした。 「悪魔族に狂わされたベアウルフどもが、うじゃうじゃ湧いて出やがって。少しは純魔族を見習って単体で来やがれ、って言ったところで意味はないか」  少年は悪態を吐く。と、ベアウルフが攻撃を行うより早く……闇に飲まれた。
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