第一章

2/7
前へ
/11ページ
次へ
「えっと何々? これより先魔物が住み着いているため、……立ち入り禁止」  金網と鉄パイプで作られたお手製の柵。その網を唯一抜けることが可能な簡易扉に、殴り書きされた文字を少女が読み上げた。  年齢は十代半ば程。長い髪は光の欠陥品、赤とはまた違う朱色を帯びている。  柵は魔物の襲撃を恐れたためではない。魔物は普段温厚で人に危害を加える存在ではないからだ。  では何故、村と森の境界線のように柵が設けられたのかと聞けば。この村の村長は胸を張って幼い子供たちのためだと返答した。  つまり、こちらから子供が迷い込んで下手に魔物を刺激しないよう、村と森の境界に柵が設けられたのだ。 ――それにしても、この金網は何処まで張り巡らされてるのやら。  少女は呆れたように口を開き、金網の続く方向を見た。その金網には終わりが見えない。 「でも魔物なら初級魔法を一通り会得した私の敵じゃない」  作り話のような伝説がある。それはこの時代より遥か昔、魔物が現代とは比較できない並外れた力を宿していた時代。  人間と魔物が戦争を起こした。その敵陣に、現代の四貴族である魔法使い“四人”が攻め込み、大いなる力を見せたという英雄伝である。  魔物の群は大型生命や中型生命が主力となり、人間を窮地に追いやった。だが、そんなときに活躍したのが“四人”の魔法使いだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加