第一章

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 現代にこそ上位下位の魔族や強い魔物はいないが、その戦乱の時代には、魔族という人間に近い身体を持った魔物の種族がいた。 ――魔物が人間のように振る舞う。……なんて恐ろしい。  昔の魔物の在り方に少女は身震いをする。そんな魔物の大群が存在していたのか、と。  しかし事実、現代には魔物との戦いに終止符を打った四人の貴族の名が残っていた。  炎の第一人者サイ・ランス。水の第一人者マリア・シグナル。雷の第一人者マイク・フェイク。光の第一人者シスタ・クエイティ。  第一人者と呼ばれた歴代の人物たちだが、第一人者という言葉は《属性を頂点まで極めた最初の者》とされている。  現代ではそれぞれの貴族が二十八代目。約千年もの間続く貴族の家系が存在する。それは約千年、長く平穏な時代が続いているという証拠に他ならない。 ――この平穏無事な日常が、あの貧弱な魔物どもに崩される訳がない。 「貴族の扱う最上位の魔法である中級魔法があれば、どの様な魔物でも蛙の子を殺すように容易い」  少女はため息を吐きながら言葉を続ける。 「現状、今の時代に置ける最も重要な問題は人間同士の争いよね」  そう呟いた少女が現在行なっている任務は《開拓予定地の事前調査》。村と森の境界から向こうを簡単に調査し、森が開拓可能であるという書類を作り提出する。 ――ありきたりな学園の課題だ。
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