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「本当だって!」
「やだー遊クンてばぁ」
「……」
随分と、楽しそうですコト。
くるん、と綺麗に巻かれた髪に香る香水。
舌ったらずな声。
そんな彼女と、仲良く談笑している彼。可愛い、なんて言っちゃって。
そんな様子を眉間にシワを寄せて眺める私、何だかすごく惨め。
「遊土(ゆうと)、遅刻しそうだから行くね」
それだけ言って、歩き出す。
「あっ旭奈(あきな)!」
私を、呼ぶ声。
そして女子に謝って、此方へと駆け寄ってくる。
背を向けたまま、さっさと立ち去ろうとする私の手首を掴んだ。
「あーきなってばぁ。妬いちゃった?」
「……別に」
つん、とそっぽを向く。
妬かないわけない。
あんな、恋人みたいなの見せられたら。
……彼女は、私なのに。
付き合って二年にもなるけれど、それまで遊土のこの浮気性は全く改善されなかった。私は遊土が毎回毎回他の女子にちょっかいを出す度ヤキモキして怒るけど、遊土の『一番は旭奈だけだ』『一番好き』という言葉に、結局は、許してしまう。
「……我ながら甘い」
そんなことを繰り返して、もう二年。
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