顧客・須藤夕李

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須藤夕李は今年十八歳の売り出し中グラビアアイドルだ。 今は午前二時。 撮影は朝十時。 少し眠りたいが眠れない。 ††† 「山岡ちゃぁん、何か目が冴えて眠れなぁい。例のものあるぅ???」 甘ったれた媚びを売る様な喋り方は天然だ。 山岡、と呼ばれた夕李からは「オバサン」のカテゴリーに入る女性は彼女の敏腕マネージャー。 「また?最近眠れないのね?」 「だよねぇ???忙し過ぎるせいかなぁ???」 「売れたらまだまだ忙しくなるわよ?」 切れ長の山岡の眼差しがシャープなラインの眼鏡から覗く。 「例の…ね。」 彼女は慣れた手つきで携帯を押す。 始めのナンバーは666。 悪魔のナンバーだ。 転送に切り替わり、彼が出る。 「ドラッグアーティストです。御用件は?」 何時もの冴え冴えとした冷ややかな声。 微妙にハスキィで滲み出る色気がある。 この声で唄を唄ったら観衆はこの声の虜になるに違いない、等と、少し頬を赤らめ、山岡は会話を始める。 「ナンバーは解るわよね?」 「はい。ミス。」 「前回と同じ物、あるかしら?」 「御望みの量だけご用意致しますが?」 「そうね…取り敢えず、一ヶ月分。時間は?」 「今はどちらに?」 「赤坂よ…」 「なら10分程で。前回と同じ場所で?」 「ええ…」 声が上擦る。 「ねぇ~山岡ちゃん、赤くなってるぅ♪♪♪そんなィィ男なの???」 「…まぁ…ね…」 出かける準備をする山岡に夕李は声をかける。 「美男子???誰に似てる???」 「誰にも似てないわね。彼は彼よ。」 「え~夕李も逢いたいぃ~」 「ダメよ。前にそれで潰れたアイドルいるから。」 「うっそー!!!そんなにィィんだぁ!!!」 「明日の支度して、寝る準備なさい。」 山岡は夕李の部屋を出る。 待ち合わせは近所の公園。 ブランコに腰掛けると、人の気配がした。 †††
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