葵と始点

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その後彼からコンタクトをとってくることはなかった。  出される料理を見た目どうりキレイに食べ終え、先程あんな約束をしたとは思えないくらい自然に店を出ていった。    正直なんだか拍子抜けといった感じだ。 あんなにサバサバされてしまうと、逆にこっちが気になってくる。 押して引くみたいな、それが彼の必勝法なのかもしれない。   22時‥私は予定どおりの時間にバイトを終え店を出た。 去りぎわの市井の態度を考えると、もしかしたら来ていないんじゃ?とも思えた。 だがまっすぐ駐車場に足を向けると、約束どおり市井が車の横に立ち待っているのが見える。   「お疲れさま」 私の姿に気付いた市井は助手席のドアを開け、紳士的な態度で迎えてくれた。 どこでこのなんちゃって紳士は狼に戻るつもりだろう‥。 相手の出方を慎重にうかがっていたときだった。 市井は私がまるで予想していなかった言葉を口にした。 「俺は探偵です」
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