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深夜の住宅街で浅人は車を停めた。
窓から外を見てみると、私の住むマンションの前だ。
一切道をナビしなかったのに、迷わず無事到着したことはつっこむべきだろうか‥。
「お待たせ致しました。お嬢様方」
浅人はドアを開けると一礼し、漫画みたいな台詞を言った。
よくも恥ずかし気もなくこんなこと言えるもんだ。
この男に執事服を着せたら、世の『腐女子』達に崇められるだろう。
紗弥の方はというと、私のマンションを見上げ、言葉にならない声をあげていた。
私の住むマンションはここらでは珍しいタワーマンションだ。
有名デザイナーが監修した部屋は、それぞれコンセプトの違う家具等が取り揃えてあり、気分転換に家具の配置変えなんてできない。
正確にはしてもいいことなんてない。
完成された部屋を崩してより良くするセンスなんて、一般人には備わっていないからだ。
個人的にはわざわざ高い所に高い金を払って住む理由はわからないが、母にとってはかなり重要なことらしい。
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