伝法屋一生という兄貴

2/20
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「人間一人一人に個性なんか必要は無い」 それが俺の双子の兄、伝法屋一生(でんぽうやかずお)の口癖だ。 「人間は一人一人が人間なんじゃあない。全員集まって、初めて人間という生き物になるんだよ。人間の三大欲と呼ばれるものがあるだろう。食欲、睡眠欲、性欲だ。それら全ては生きる為、否、正鵠には子孫を遺す為にある。子孫を長く遺す事こそが、我ら人間が長生きするという事になるのだ。人一人が長く生きてどうする?重要なのは、子孫をより多く、長く遺す事だ。一人一人の生命など、世間が言うほど重くもない。人間がより多く残る為ならば、矮小な人間は命を諦めるべきなのだ。次男、お前、箱の中でミカンが腐っていたら、それを捨てるだろう?それと同じだ。全体の中で、不必要は切り捨てるべきなんだ。それが我ら人間の本望なんだよ、分かるか次男」
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!