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「分からないよ」
朝食のトーストを食べながら、俺はうんざりした気持ちで兄貴のそれに答える。
「そんな事より、そろそろ出ないと高校に遅刻するぞ」
「次男、次男、なあ次男。知っているか?全力で走れば、高校まで僅か18分あれば着くんだ。だからまだ22分ほど余裕があるというわけだ」
「俺は一生ほど足に自信は無いし、そもそも走りたくはないから、もう出るよ。母さん、ごちそうさま」
空になった皿を母親に渡す。
タイミングが良かったのか、その皿はすぐに母親によって綺麗に洗われた。
普通に家事をこなす母。
俺達より少し早く家を出た父。
そして、一生と全く同じ顔をした、俺。
俺も母親も父親も、どこにでもいる普通の人間だ。
それ故に、何故兄である一生が生まれてしまったのか、俺は不思議で不思議でならない。
「もう行くのか?早いな。僕はまだトーストを四枚しか食べていないぞ」
「何枚食べるんだ。じゃあ母さん、行ってきます」
「ちょっと待ってくれ!」
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