1人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
俺が玄関を出ると、中からバタバタと慌ただしい音が聞こえた。
気にせず歩を進めれば、程なくして食パンをくわえた一生が俺の隣に追い付いた。
「わっふぁふ。ふぶうぉ、うぉわへわわぁ…」
「はいはい。食べてから話せ。別に話さなくても良いけど」
お約束とも言える注意を入れると、一生は飲むようにパンを嚥下した。
詰まらないのだろうか。
いや、詰まったら詰まったで少しは静かになるのだろうか。
そんな不謹慎な事を考えていると、一生が人差し指を立ててこう切り出した。
「次男、殺人鬼の噂は聞いているか?」
「また唐突だな…」
殺人鬼といえば、ここ最近の連続殺人事件を思い出す。
老若男女を問わず猟奇的な殺人を繰り返すその事件は、最近一番の話題の種だ。
しかもそれの大半が、俺達の住むこの町で起こっている事から、犯人が町の中にいるという憶測まで立っている。
「なあ次男、お前は知っているか?」
「何をだよ」
「殺人鬼は、実は四人という事さ」
最初のコメントを投稿しよう!