伝法屋一生という兄貴

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俺が玄関を出ると、中からバタバタと慌ただしい音が聞こえた。 気にせず歩を進めれば、程なくして食パンをくわえた一生が俺の隣に追い付いた。 「わっふぁふ。ふぶうぉ、うぉわへわわぁ…」 「はいはい。食べてから話せ。別に話さなくても良いけど」 お約束とも言える注意を入れると、一生は飲むようにパンを嚥下した。 詰まらないのだろうか。 いや、詰まったら詰まったで少しは静かになるのだろうか。 そんな不謹慎な事を考えていると、一生が人差し指を立ててこう切り出した。 「次男、殺人鬼の噂は聞いているか?」 「また唐突だな…」 殺人鬼といえば、ここ最近の連続殺人事件を思い出す。 老若男女を問わず猟奇的な殺人を繰り返すその事件は、最近一番の話題の種だ。 しかもそれの大半が、俺達の住むこの町で起こっている事から、犯人が町の中にいるという憶測まで立っている。 「なあ次男、お前は知っているか?」 「何をだよ」 「殺人鬼は、実は四人という事さ」
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