伝法屋一生という兄貴

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まあそれも、禊の後ろに控える男がいなければ、だが。 「安定、お前はどう思う?」 禊がぐるりと振り返り、背後の男へと声をかける。 すると、彼、風穴安定(かざあなやすさだ)は俯いていた顔をゆっくりと上げた。 「……別に」 「そうか」 そう言ったきり安定はまた下を向き、禊は気にした風も無くこちらに向き直る。 二人はずっとこうだ。 馴れ合うわけでもなく、かといって離れるわけでもなく。 最初は恋人なのだと思っていたが、どうやらそんな単純なものでもないらしい。 「楽しいがな。殺人鬼が四人という説は。まあ単純に危険が四倍になるってわけだから、そんな喜んでもいられないけどな」 「そうなんだよね」 「で、やるのか?次男、お前は殺人鬼退治をよ」 「やるわけないだろ」 手を顔の前で振り否定する。 何で俺がそんな危険で面倒な事をしなきゃならないんだ。 「そういうのは、警察の仕事だろ」 「まあ、そうなんだけどな。楽しいじゃないか。友達が殺人鬼退治とか」 「禊、お前な、」 「冗談だ。そんな怒るな」 顔に巻かれた包帯が引きつる。 これも笑っているのだろう。
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