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彼は将来メジャーリーガーを目指す
13歳の野球部員。
マネージャーを務めるうちは
今日もまたベンチでお見送り―――
夢かっっ!
と自分でも突っ込みたくなる。
野球部員とマネージャーが
付き合っとるなんて、
乙女の妄想の世界としか思えへん。
でも、事実は小説より
奇なりとはよく言ったもの。
うちはそんな現実を手に入れてしまって、
ついニヤニヤしながら自分の頬を叩き
「やっぱ、夢ちゃうんや~…」
そう何度も呟いた。
ああ、うちは幸せ者や!
でも、事実は小説ほど甘くない。
9回ウラ同点
二死満塁、相手の攻撃。
抑えたら、勝ち。
打たれたら、負け。
最大のチャンスで
最大のピンチや。
我が校期待の
新エース齋藤稜駿は
マウンドで荒い息をしている。
その瞳は待ち構える相手の4番に
完全に怯んでいた。
なっさけないな~しっかりせんかい!
あんた、うちの彼氏やろがっ!
そう叫んでやろうと、
息を吸い込んだときだった。
「りょうまーっ!しっかり投げろーっ!」
「俺らが絶対抑えるから安心しろよー!」
内野の選手たちが叫ぶ。
外野がグローブを振る。
キャッチャーのキャプテンが、
マウンドに上がって何か囁いた。
稜駿は皆にニコッとすると目を開いた。
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