▼ もっと愛し合いましょ

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彼は将来メジャーリーガーを目指す 13歳の野球部員。 マネージャーを務めるうちは 今日もまたベンチでお見送り――― 夢かっっ! と自分でも突っ込みたくなる。 野球部員とマネージャーが 付き合っとるなんて、 乙女の妄想の世界としか思えへん。 でも、事実は小説より 奇なりとはよく言ったもの。 うちはそんな現実を手に入れてしまって、 ついニヤニヤしながら自分の頬を叩き 「やっぱ、夢ちゃうんや~…」 そう何度も呟いた。 ああ、うちは幸せ者や! でも、事実は小説ほど甘くない。 9回ウラ同点 二死満塁、相手の攻撃。 抑えたら、勝ち。 打たれたら、負け。 最大のチャンスで 最大のピンチや。 我が校期待の 新エース齋藤稜駿は マウンドで荒い息をしている。 その瞳は待ち構える相手の4番に 完全に怯んでいた。 なっさけないな~しっかりせんかい! あんた、うちの彼氏やろがっ! そう叫んでやろうと、 息を吸い込んだときだった。 「りょうまーっ!しっかり投げろーっ!」 「俺らが絶対抑えるから安心しろよー!」 内野の選手たちが叫ぶ。 外野がグローブを振る。 キャッチャーのキャプテンが、 マウンドに上がって何か囁いた。 稜駿は皆にニコッとすると目を開いた。 .
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