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~♪~♪~♪~♪~♪~
帰る時間だ。
この音楽『夕焼けこやけ』はその合図。
今の僕にはこの曲がうらめしかった。
「もう、帰る時間やな」
ほら、菜々香がこう言う。
ついさっきまで一緒に勉強していたのに
下校のチャイムで終わりを告げられる。
冬は昼が短いからか4時半でも
もう日が沈みかけてる。
オレンジ色に
染まりかけた空が綺麗すぎて
僕はふと涙が出そうになった。
「もう帰らんと門閉められちゃうで~」
菜々香が僕を呼んでいる。
「帰りたくねぇなー」
ついこぼれた本音。
「なんか稜駿、弟みたいやなっ」
菜々香はそう言いながら
僕の頭をグシャっと撫でた。
「弟かよ...」
「誉め言葉やで~?素直に喜べや!」
「あははっ」
笑ってみせたけど
なぜかちょっとだけ悲しかった。
帰り道を一緒に歩くが
特に話すこともなく
時間だけが過ぎていく。
眩しい夕日にたそがれていたせいで
あっという間に
別れの交差点にのしかかった。
「ほんじゃ。稜駿また明日!」
「おう。じゃあな」
僕に背を向けて歩きだす菜々香。
ついこの間まで背負っていたリュックより菜々香にはちょっと大きい気がする
エナメルバッグが揺れている。
僕は頼りなく校門にもたれ掛かった。
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