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☆
その本の中の騎士は剣を自在に使いこなし、白馬にまたがり、誰よりも強かった。
ある日、その国のお姫様は、人々を苦しめる巨大な竜に捕らわれ、連れ去られてしまった。
国王は嘆いた。王妃は涙が止まらなかった。騎士たちは膝をついた。しかし、誰一人として竜に立ち向かう者はいなかった。
勝てるはずがなかった。
竜は巨大。竜の鱗は鋼鉄よりも硬く、竜の吐く炎は騎士の鎧を容易に溶かすほど熱かった。竜の翼が生み出す風は竜巻のように被害をもたらした。竜が歩けば地が揺れた。
それは天災と同等だった。
天災と同等の竜に人間が適うはずがない。人が竜巻を消しさることができないように。人が光の速さである雷を避けることができないように。人が地震を止めることができないように。
そんな時、一人の騎士が帰って来た。全てを弾く白銀の鎧を身に纏い、神速で走る白馬を連れて、悪を斬り裂く一本の聖剣を携えて。
その騎士は迷わなかった。
すぐさま白馬に跨り、竜の住処へと向かい、剣を振るった。
天災と呼ばれる竜に騎士はたった一人で挑んだ。
誰もが不可能だと恐れをなしたその状況に、騎士はたった一人で挑んだ。
城で帰りを待つ人々は誰もが諦めていた。美しいお姫様の命も、もっとも強い騎士の命も。
数日後、騎士は帰ってきた。その腕に国の姫を抱いて。
絶望を胸に待っていた人々は誰もが歓喜した。まるで奇跡を目の当たりにしたように。
その日から、その騎士は英雄となった。
その日から、その騎士は聖騎士と呼ばれた。
そして、その騎士はお姫様と結ばれた。
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