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誰にも邪魔されずに外の月を見られる夜中が唯一の楽しみ。
家の鍵を持って重く黒い玄関扉を開き、エレベーターに乗り最下層まで行く。
そこからエントランスの扉を開けてマンションの外に出れられる。
静かに光る満月。
碧はそれがとても好きだ。
眩しい太陽と違い、直視できるからだ。
碧が人を恐れるように。
「この時間がずっと続けばいいのに」
そうすれば私は嫌な事も思い出さないで泣かず済むのかもしれないのにね。
碧は誰もいない入り口で月を仰ぎながら呟く。
スーッと頬に水滴が這うと直ぐに拭う。
…さあ、戻ろうか。
碧はそう考えるとエントランスの方へ歩み出す。
キンッ…キンッ…
「…?」
何処からともなく金属がぶつかりあうような鋭い音がする。
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