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店が立ち並ぶ通りを抜け、はるか遠くの淡い夕日の色をまとった空を視界にとらえながら僕は河原沿いを歩いていた。
顔に吹きつける風が冷たい。上着のポケットにねじ込んでいる両手は指先まで冷えきっていた。冬が本格的に到来したことを思わせるような寒さである。
「ふう…。」
ゆるんでいたマフラーを巻き直しながら僕は息を吐いた。
気が付くとずいぶん歩いていた。道に沿って並んでいた花壇もいつのまにか途切れていた。人の姿もほとんど見えなくなり、車が走る轟音も遠くに聞こえる。
やがて、目的地としていた、小高い丘が見えてきた。今歩いている道はあの丘を行き止まりとして途切れており、そこからは様々な景色を見ることができる。
ひとしきり冷たい風が身を包むように吹いて、僕はやがて丘の地面を踏みしめる。
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