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「オッス! 迎えに来たぜっ、お前達」
二週間前に喉の不調を訴えた相棒を迎えに、獅童義正の工房に訪れた俺。
俺が思うに、大陸でも屈指の腕前の職人である獅童は、そうなる為に費やした時間を代償に、職人気質というヤツを手に入れたのだろう。
そんな獅童のジイサンの説教を覚悟していた俺は少し拍子抜けした。
「あっ、ディノさん、ちゃんと仕上がりましたよ」
声を掛けて来たのはジイサンの弟子。
一階の工房スペースにいっぱいの工具やら材料やらを慎重に避けながら、その少年、ブラムは一度地下に下り、箱を一つ大事そうに抱えて来る。
「完璧か?」
ジイサンの腕は信用しているが、流石に不安はあった。
「ええ、もちろん……まぁ見て下さいよ……っと」
机の上の工具を片付け箱を置いたブラムは、ポケットから取り出したゼンマイのような物を箱正面の金縁の穴に差し込む。
数度、右や左に回したところで、その箱は音楽を奏でながら蓋を開ける。
普段はアレだが、流石ジイサンの弟子、まるで赤ん坊を抱くようにそっと中の物を取り出し、俺に差し出す。
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