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再開
俺は最初、どこに居るか分からなかった。道は舗装されておらず、少し上を見上げれば不気味な社が木陰にたたずんでいる。
死んだ人間は生き返らない。
僕は生き返ったのではない。確かに死んだのだ。俺の存在は俺にしか意味を成していない。いわゆる透明人間…
どうやらここはバスの停留所らしい。すっかり錆びてしまった鉄には聞いたことのない地名が書いてあった。1日に3回しかバスはこないらしい。
透明人間とさっきはいったけど、僕はそれよりも悲しい存在だ。触れあうことはできないうえに事実上死んでいる。
僕が中学生のときに思い描いた透明人間がどんなに可愛いもので、平和なものだったか改めて感じた。こっそり女風呂に忍びこんで、ニヤニヤしてるだけの可愛いそいつはもはや同種ではない。
バスがやってきた。しかし無人の停留所には目もくれず、マフラーから黒い煙を出して走り去っていった。
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