懇願

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懇願

ATMがこのご時世に全部修理中だなんて笑える。銀行は幸いにも道を挟んですぐそこにある。列に待たせてある彼女を思うと急がねばならなかった。 横断歩道を渡ろうとすれば信号もあるし、なんたって遠回りだ。ここは「急がばまっすぐ」、植え込みの柵を越えて行くことに迷いはない。俺は柵に足をかけ、軽く飛び越えた。低い植え込みばかりで左右の確認は容易に思えたが、いくらかの葉に隠れたトラックに俺は気づかなかった。 トラックを真横に感じてすぐ、体と俺は別のものになってしまった。
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