懇願

2/3
前へ
/9ページ
次へ
死ぬ、という言葉はすぐには思いうかばなかった。なんだか不思議な感じで軽やかだった。 それでも香緒里のことを忘れることはできない。魂はどこかの空中で揺らいだ。 白い雲の切れ間から鮮やかな光に乗って綺麗な女性が降りてくる。さもそれが日常かのように僕は受け入れてしまった。その女性が美しかったから?死という非日常を味わったから?いや、理由などいらないし、ないのだろう。それが絶対の権威を秘めているのは確実だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加