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それから、私とお父さんとお母さんは、神社の本殿まで行きました。ここまで来ると、チョコバナナのお店も、りんご飴のお店も、綿飴のお店も見て、相場というものが分かっていました。
本殿で鐘を鳴らして、おみくじをひいて、来た道を戻るとこになりました。
一番近くのお店は焼きそば屋さんです。美味しそうなソースの匂いを我慢すると、次は綿飴屋さんがあります。私は幼稚園のときに綿飴を食べているので、これは簡単に我慢でしました。
そして、りんご飴屋さんの前で止まります。まるで宝石のような飴です。真紅という言葉が合う、とても綺麗な色をしています。一番大きな飴は、私の顔くらいもあって、値段はとても高いです。どんな風に食べるものなのかしら、と考えてるだけで、とても面白いです。
「買わないのか?」
お父さんが聞きました。私は首を横に振ってから、お母さんの浴衣を引っ張って、逃げるように走りました。
そして最後のお店はチョコバナナ屋さんです。私はこれを買うことにしていました。けれど、結局、私はチョコバナナを買いませんでした。金魚すくい屋さんを見つけたからです。大きな水槽をゆっくりと泳ぐ金魚は、とてもかわいくて、ずっと見ていたくなります。私は、この金魚を飼ってみたくなりました。
「駄目よ。金魚なんて」
お母さんが言いました。お母さんは、私がペットを飼うことに昔から反対してたのです。けれど、お父さんは違います。
「いいじゃないか、金魚くらい」
「藍華は7才よ。生き物を飼うには早すぎよ」
「俺は5才で金魚を飼ってたぞ」
「面倒をみてたのはお母様でしょ」
お父さんとお母さんは小さな声で喧嘩を始めました。私は二人の間に入って喧嘩を止めました。
「喧嘩しないで。私、金魚なんていらないから、もう辞めて」
「分かるだろ?」
お父さんが言いました。すると、お母さんはなにかに納得した顔で頷きました。
「そうね。藍華は賢いものね。きっと、命の大切さを分かってるわよね」
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