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いいことがあれば、決まって悪いことがあります。
私が生まれてひと月後に、おじいちゃんが交通事故で亡くなりました。だから私は、おじいちゃんの顔を遺影でしか知りません。お父さんもお母さんも、そしておばあちゃんも、口を揃えたように「おじいちゃんは優しかった」と言います。
けど私は、おじいちゃんの優しさが分かりません。
お母さんのように、私を想って厳しくする優しさもあれば、
お父さんのように、私の心を包む優しさもあります。
おばあちゃんの優しさも違っていて、たまにしか会えないけど、会ったときはいつもにこにこして飴やお煎餅をくれます(あまり好きな味じゃないけど)。
だから、おじいちゃんは優しい、と言われても私にはピンときません。
昨日、いいことがありました。
病院に行っていたお母さんが帰って来ると、とても喜んでいたのです。
どうしたの?と私がきくと、お母さんはこう言いました。
「藍華、お姉ちゃんになるんだよ」
私は声を裏返して喜びました。
そして今日の朝--
元気が死んでいたのです。
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