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「帰りましょうか・・・お家、どこ?」
私を助けた少年は、私の手を取って、立たせてくれた。
「この近く・・・です」
赤く腫れた目を擦りながら歩き出す。
彼は私を送ってくれると言う。
「いいです・・・帰れます」
「帰り道、車の前に飛び出したりしませんか?」
それは、私に「また自殺を図らないか?」と聞いているのだろう。
「・・・・・・」
「一緒に、帰りましょう?」
私ははじめて、男の子と一緒に帰る事になった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
カツッ――カツッ―――
響く2つの足音。
私は何も喋れないでいた。
というか、喋りたい気分ではない。
彼は左腕を押さえ、目を伏せていた。
「あの・・・お名前は?」
沈黙を破ったのは彼だった。
「我妻深由(ワガツマミユ)」
「深由さん・・・ですね。僕は、佐伯南之(サエキナノ)です」
「変わった名前ですね」
「あはは。よく言われます」
南之さんは多分すごく、いい人だ。
でも、私はそう簡単に信用出来なかった。
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