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ようやく自宅の前にたどり着き、彼に別れを告げた。
「じゃあ。」
「はい。ありがとうございました」
南之さんの背中を見送る。
ぼーっとしていた意識が少しだけ覚醒して、ふと浮かぶ。
私、なんで死のうとしたんだっけ?
それはきっと、些細なきっかけ。
それはきっと、小さな歪み。
今、家に帰るのは酷く億劫だった。
また、あの人が泣いているだろう。
空を仰いで、あまりに眩し過ぎる太陽に少しだけ厭味を吐いた。
「私はもう、笑えないのよ」
鞄と意識を握り締めて、玄関を開けた。
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